思い出す。

2005年1月16日
冬休み中に、VITALという映画を見て。
医学生の話で、解剖のシーンとか、わりとぐろい映像もありつつ
しかしながら、愛をつづっていく。それも計り知れないほど深い。
最後の、死んでしまった恋人の言葉がしみてしみて。
涙が出ました。
あのシーンを見るために、この映画はあるのかなというくらいに。
浅野忠信の恋人役のバレリーナの女性がとてもきれいで。
ひきしまっててきれいなからだでした。あこがれ。

この映画を見たのはもう2週間ほど前だけれど。
19−23歳という時間を一緒に過ごした、昔の彼を思い出して。
その彼は、医大生でした。
解剖実習ももちろんあったみたいで、
「初めは気持ち悪くなったけど、慣れたころにはみんな、
 もりもり昼飯とか食っちゃうんだぜ」
なんていう会話を思い出したりして。

彼の家には、医学書がたくさんあって。(あたりまえだけど)
人体の不思議展、みたいなので見るようなスケッチがはいった
本とか、聞いたことない病気の症例がたくさん載っている、
難しい本がたくさんあって、彼はそれをほとんど覚えるくらい
試験前とかがんばってたのを思い出した。
私みたいな、おきらく大学生とは違うんだなーって思ってね。

国家試験前なんかは、試験勉強して机に向かう彼の背中を
みながら、彼の部屋で過ごしていた。インターネットしたり
本を読んだり、おとなしくして。
それでも、お互いに良かったんだな。一緒に過ごしたかったんだ。
一緒の部屋で気配を感じながら、でも別々のことをして、
それが心地よかった。

彼も私も、お互いに食いしんぼうで。
早稲田に近いその街は、お金のない学生でも楽しめる
ジャンクな食べ物屋さんがいろいろあって。
彼の試験勉強の休憩に、食べ歩くのが楽しみで。
ささやかに楽しく過ごしていた。

彼の家の風景は、今も思い出せる。
間取りも、家具も、机の上の散らかり具合もすべて。
「生涯、忘れることはないでしょう」っていう歌詞があったけど。
さっき何気なく、ねぼこまなこで頭にフラッシュバックした
あの幸せな時間の風景は、きっとずっと思い出せるなって思う。

かんちゃんっていうトラねこがいた。
彼の友達がてなづけてしまったそのねこは。
彼の部屋に出入りするようになり、私たちと一緒に過ごした。
私も出かけるとき「行ってくるね」といってかんちゃんと
外へ出ると、「にゃー」って返事をする律儀なねこだった。
眠るときは、布団の足元に包まっていて、あったかく。
ねぼすけなわたしたちが起きないのに痺れを切らして、
ほっぺをなめてみたり、掛け布団に乗って体重をかけてきたりする
きゃわいいねこなのでした。

大屋さんを気にしていた彼も、「かんちゃんは、いいねこだよ」
という私に、というか、かんちゃんのかわいさにやられて。
「タリーが来てなくても、家の前でにゃーにゃー鳴くんだよ、
 仕方ないから入れてあげるんだ」と
困ったようなうれしそうな顔をしていたな。

かんちゃんと遊んだり、彼のパソコンに友達がインストール
していったファミコンでハットリ君とか、グーニーズとか
よくやってたな。
彼に似た[DEADBEAR]のちっちゃいのをあげて、名前をつけて。
一人暮らしの私は、ほんとに彼とよく一緒にいた。
よく5年も飽きずに。楽しかった日々。
私が就職して、彼も同時に研修医になって、彼が引越しをして。
それから数回あったけれど、わたしたちははなれた。

年末にベビーが嘔吐し続けたので、夜間の小児救急へ行った。
指定病院のそこは偶然、彼の友人が研修医を勤めていた病院で。
今はきっと違う病院に勤務しているのだろうけれど。
なんとなく、あたまに「そうだったな」ってよみがえる。
あのころが懐かしい。

今、私の隣で眠るベビー。
あなたと出会う、何年か前に私が過ごした大事な時間だったよ。
彼と離れてしまったことは、今も切なく胸に残るけれど。
なんていうか。変な意味でなく、今は、ベビーあなたが大切で。
そういう自分が大好きなんだ。

でもね。(ネタばれになるからVITAL見たい人は読まないように!)

VITALの最後で「死ぬ前に、ひとつだけ好きな場面の映像を
見れるとしたら、何を見たいと思う?」
というシーンで。(最初に述べた、映画のメインシーン!)
わたしは彼を思ったのでした。そして涙が出た。

思い出はきっと美しいのでしょう。わかってはいるけど。
でも。これくらいの秘密が、ママにもあってもいいよね。

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